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ジャパンクオリティを世界へ。
ワクチンや半導体、動物… 高難易度の特殊貨物輸送に挑むプロフェッショナルユニット 仕事の流儀

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ジャパンクオリティを世界へ。
ワクチンや半導体、動物… 高難易度の特殊貨物輸送に挑むプロフェッショナルユニット 仕事の流儀


日夜、さまざまな貨物が航空機で世界に運ばれている。その中でも、特殊な輸送技術を必要とする貨物がある。

一定の衝撃を受けると中央のカプセル内が変色し、衝撃の有無を確認できる衝撃探知機「ショックウォッチ」。輸送環境のモニタリング、荷扱い者への注意喚起などを目的に使用されている。

たとえば新型コロナウイルス感染症のワクチンなどの医薬品や、動物園の動物や競走馬などの動物輸送、取り扱いに配慮が必要な半導体や電子機器類などだ。上屋や航空機内の温度の変化や少しの衝撃で商品が劣化、破損してしまうおそれもあるほか、動物に至っては少しの環境変化が最悪の事態を招きかねない。ANA Cargoは、そうした特殊な輸送技術を必要とする貨物を始めとした貨物全般に対して、適切な安全管理を徹底して、お客様に安定した品質を提供している。

近年では、航空輸送のニーズが高まり、2022年には2019年比で半導体・電子機器は+42%、生産設備は+66%、医薬品にいたっては+160%まで増加している。船便では到着まで多くの日数を要するが、航空便では短時間で輸送できることもニーズ増加の背景のひとつにある。

ANA Cargoでは、運ぶ商品のカテゴリ毎に顧客から様々な要望があるため、それに柔軟に対応すべく、100人以上のメンバーの中から高い輸送スキルを持つメンバーを選りすぐった「プロフェッショナルユニット」を2023年7月1日から運用を開始した。

2023年10月には、関連貨物を含めると総重量約5トンの人工衛星の輸送プロジェクトを成し遂げている。そのプロフェッショナルユニットが生まれた背景やANA Cargoならではの強みとは。また、2023年10月の人工衛星輸送はどのように進んだのかを紐解いていく。

多彩なスキルを持ったチームをワンストップで。横断的なナレッジがあるからこそ、万全の輸送を実現できる

特殊貨物を輸送する際には、貨物によって様々な細かい要件を満たす必要があり、少しの衝撃で破損してしまうような半導体部品や、単体で10トンを超えるような大型貨物まで、貨物ごとに求められるノウハウは大きく異なる。繊細なひとつのミスが最悪の事態を引き起こしかねないため、一瞬たりとも気を抜くことはできない。

そんな特殊貨物輸送について卓越したスキルを持った集団。名のごとく「プロフェッショナルユニット」だ。特殊貨物の受託調整から当日のハンドリングまでのプロセスに関わる彼らは、各部署から選出された11人のプロフェッショナルたちだ。

貨物を一時保管する上屋での作業の様子

プロフェッショナルユニットは、成田空港に所属する会社認定のハイスキラー(エキスパート)と、本社部門に所属する各種商材に関して高いナレッジを持つ社員(スペシャリスト)で構成される。顧客から特殊な輸送案件※の依頼を受けた際に、その案件に関するノウハウや輸送スキルを備えた社員3-4名程度で「ユニット」が構成され、当該案件の検討から輸送完了までの工程を一気通貫でスーパーバイズする仕組みである。
ANA Cargoでは、2024年1月現在11名のエキスパートが活躍しているが、全社的な枠組みで育成体系を定め、この仕組みを支えるプロフェッショナル人財の育成・拡充を図っている。

※特殊案件:「超大型貨物」「温度管理や振動等への微細な配慮が求められる商材(半導体製造装置や美術品・危険物など)」「社会的使命や人命・研究、秘匿性等に配慮が求められる商材(医薬品など)」「(特に大型の)動物」「荷主企業様のサプライチェーン構築のコアに位置付けられる輸送」など(ANA Cargoの特殊輸送商品であるPRIOのラインナップも含む)

業務内容を大きく分けると貨物の輸出入において搭載位置を決める積み付け指示書の作成や、指示系統の連携を行う「インサイド業務」、貨物の搬入や、積み付け指示書に基づいた積み付け、積み付けたULD(航空貨物を一定の単位にまとめ、貨物室に搭載する用具の総称)の計量などを行う「アウトサイド業務」のふたつがある。

「これまで培ったスキルやノウハウが物をいう特殊貨物輸送においては、さまざまな経験を積んだベテランをアサインしています」と話すのは、プロフェッショナルユニットのオペレーションを担当する成田ウェハウスオペレーションセンター 貨物サービス部運送6課課長 茅根聡(ちのね・さとし)だ。

成田ウェハウスオペレーションセンター 貨物サービス部運送6課課長 茅根聡(ちのね・さとし)

茅根「貨物輸送の現場ではさまざまな事態に柔軟に瞬時に対応するハンドリングスキルが必要です。そのためインサイドとアウトサイド、両方に精通したメンバーを招集しました。特にアウトサイド業務においては、貨物の積み付けのほか、現場で周りへの指示出しなど細かな調整が求められます。そうしたナレッジやコミュニケーションに長けた人材を中心に、若手から熟練まで不足ない面子を揃えました」

一側面のノウハウだけでは、現場の不測の事態に手をこまねいてしまう。その横断的なナレッジがあることで万全を期した輸送を実現できる。作業フローが分断しないため、ワンストップサービスで確実に輸送を提供できることも強みだ。

セールス活動に同行し、現場視点と顧客の立場で不安を解消。顧客への寄り添い方

左からプロフェッショナルユニットを統括する茅根聡、プロフェッショナルユニットメンバーの篠塚義広、貨物輸送統括責任者の山本哲也

また、プロフェッショナルユニットのメンバーは、特殊貨物を受託する際に、顧客のもとへ営業担当とともに同行するのが特長といえる。

デリケートな貨物を長距離輸送する顧客の要望は多岐にわたり失敗は許されないが、現場を熟知したメンバーが輸送環境の状況や対応をその場で事細かに伝えることによって顧客の不安を払拭し、スピーディーに信頼と安心感を醸成する。受諾からハンドリングまでを一手に行うプロフェッショナルユニットの強みであり、ANAグループ全体のホスピタリティの高さの証左だ。

「ワクチンや半導体など、特殊貨物輸送のニーズが高まる中でANA Cargoが高いレベルで荷主様のハンドリングリクエストに応えるためにはプロフェッショナルユニットの存在は不可欠でした」と貨物輸送の統括責任者である貨物サービス部部長の山本哲也(やまもと・てつや)は語る。

貨物サービス部部長 山本哲也(やまもと・てつや)

山本「大型貨物からデリケートな貨物まで、他のキャリアが二の足を踏んでしまうような貨物を我々に安心して任せていただけるようなユニットになっています。高いスキルでお客様のリクエストに応えつつ、さらに輸送で得た知見をANA Cargo全体へフィードバックする。そうすることでより安全で確実な輸送を実現できますし、積み重ねたナレッジは我々とお客様の財産となります」

ちなみにANA Cargoはサプライチェーンを守るという社会的使命のもと、2021年2月以降、海外からファイザー社製の新型コロナワクチンの輸送を幾度となく完遂している。そのすべてが無事故であったことから、2021年12月にファイザー社より表彰を受けた。そのことからもANA Cargoの輸送品質の高さを伺い知ることができるだろう。

衝撃リスクに配慮した精密機器のための航空輸送。ショックウォッチ・ティルトウォッチ付きの半導体製造装置や医療機器などの輸送に対応しています。
PRIO SENSITIVE→

前代未聞の人工衛星輸送プロジェクト。積み重ねたナレッジとコンビネーションで困難な輸送を完遂

冒頭でも触れた、宇宙の軌道混雑やスペースデブリ(宇宙ゴミ)の脅威を解消する取り組みを行うアストロスケール社が製造した人工衛星「ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)」を、郵船ロジスティクス株式会社と連携し、打ち上げが行われるニュージーランドへ輸送した。その輸送プロジェクトも並大抵のものではなかった。

アストロスケール社製造の人工衛星をニュージーランドへ輸送

入社9年目、運送3課・インサイド業務を担当する千田圭吾(ちだ・けいご)と、貨物を貨物機に積み込む機側作業を28年間経験してANA Cargoへ転籍した運送6課・アウトサイド業務を担当する篠塚義広(しのつか・よしひろ)。若手とベテラン、2人のコンビネーションがうまく噛み合ったのも功を奏したといえる。

成功の背景にはさまざまな困難があった。ANA Cargoでは人工衛星輸送は前例がなく、貨物そのものも非常に繊細な部品が集まっている。加えて関連貨物を含めると総重量5トンを超える大型貨物。一筋縄ではいかなかった。

アストロスケール社がANA Cargoを使用するのは今回が初めてということもあり、事前の打ち合わせの際にも丁寧にコミュニケーションを重ねた。セールスとの同行はもちろん、その後も週に1回のペースで意見交換をして不安をひとつひとつ潰していき、成田空港で積み付けや荷下ろしのデモンストレーションをしつつ細かな検証を重ねた。

千田「貨物輸送においてはただ貨物を運ぶだけではなく、まずお客様に安心して任せていただけるような信頼関係を築くことが何より大切なことです。まずそこを踏まえた上で、ユニット内でもどの方法が最適か議論を重ねて精度を上げていきましたね」

貨物サービス部 千田圭吾(ちだ・けいご)

そして成田での輸送当日がやってきた。

貨物の積み付けを行う上屋では紫外線による劣化と温度上昇を回避、そして濡損(じゅそん)※を防ぐため上下をビニールで覆って水の入る隙間をシャットアウト。振動を吸収する緩衝材も最適なものを選りすぐって準備を整えていた。※貨物(商品)の破損で漏れ出た液体が他の貨物(商品)を濡らしてしまうイレギュラーな事象のこと

篠塚「私自身、過去のキャリアで人工衛星輸送を経験しているので、想定準備を含めて落ち着いて臨むことができました。当日は既にアストロスケール様と郵船ロジスティクス様の方で丁寧に梱包が済んでいたので緩衝材は使いませんでしたが、予期せぬ事態に備えて当たり前のことを淡々とこなしていきました」

貨物サービス部 篠塚義広(しのづか・よしひろ)

デリケートかつ超重量の人工衛星。貨物を搭載する上では、機体と貨物のウェイト&バランスも重要になる。重量を一点に集中させてしまうと機体も不安定になり、荷物が転倒すると破損するばかりではなく飛行機に多大なダメージを与えてしまう。

貨物室の様子

そのため、積み込みの設計図を制作するインサイド担当と貨物を積み付けるアウトサイド担当のコンビネーションが不可欠。千田と篠塚のコンビは互いに確認しながら長年のノウハウを活かし、最適な重量分散をやってのけた。おかげで貨物は傷ひとつなく無事ニュージーランドのオークランド国際空港へ到着した。当日空港で作業にあたっていた2人も込み上げるものがあったという。

千田「当日は、出発地や到着地など、多くの関係者が関わるコミュニケーションを円滑にする役割を担当しており、目まぐるしく時間が過ぎていきました。緊張はしましたが篠塚さんとも連携をとり、無事貨物を運び届けることができて感慨深いです。私はスペースシャトルの発射場がある鹿児島の種子島出身で、今回の人工衛星輸送とは不思議な縁を感じています。ANAグループ一丸となって取り組んだプロジェクトだったと思っているので、絆が深まった体験でした」

篠塚「アウトサイド担当として運び出しのときにも細心の注意を払いました。現場判断でフォークリフトを別のものに取り替えてもらうなど、100%の安心を届けるべく神経を尖らせていました。それゆえ搬送と荷下ろしが終わって、お客様から面と向かってありがとうと言われたのはすごく印象に残っていますね。アウトサイドをやっているとどうしても貨物が届いた先は見えないので、今回お客様が喜ぶ顔が見れて仕事冥利に尽きました」

成田国際空港での出発前の様子

100%の安心を[届ける]。世界にジャパンクオリティを伝える一助に。

アストロスケール社の人工衛星輸送は極めて理想的な形で終わり、その経験はプロフェッショナルユニット、ひいてはANAグループ全体の資産となる。2023年7月から運用が開始されたプロフェッショナルユニットだが、これからさらに躍進が期待される。

100%の安心と、貨物を安全に届けるANAグループの意志はこれからも揺るがない。プロフェッショナルユニットのオペレーション担当の茅根と、統括責任者の山本にあらためて展望を聞いた。

茅根「特殊貨物のニーズは今後世界的に高まっていくはず。その中で我々はお客様の信頼を勝ち得て、顧客が不安に感じることは徹底的にケアし、きちんと寄り添いを大切にしていきたいです」

山本「難度の高い特殊貨物を安全に運ぶことでお客様のニーズを叶えるだけでなく、これからは輸送クオリティの高さを一般の方にも広く伝えていきたいです。日本の輸送品質の高さは世界的に見ても類を見ないほど。今後はプロフェッショナルユニットをより拡大し、海外拠点など幅を広げることで、世界にジャパンクオリティを伝える一助になればANAグループ全体としてこんなにうれしいことはありません」

特殊貨物の輸送は一瞬の油断も許さないプロフェッショナルな領域。そこには現場で働くスタッフの並々ならぬ思いが詰まっていた。お客様の大切な貨物を安全にお届けし、そのサプライチェーンすべてのより良い未来に向けて、ANA CargoとANAグループの挑戦は続いていく。

山本 哲也(ヤマモト・テツヤ)

株式会社ANA Cargo 成田ウェハウスオペレーションセンター 貨物サービス部 部長

1991年現ANA成田エアポートサービス(株)入社。NCA・ANAの国際貨物オペレーション業務を担当。2022年4月に(株)ANA Cargoに転籍。空港オペレーション現場の統括管理を担当。マイブームはキャンプ。近々ソロキャンプに挑戦したいと思っている。

茅根 聡(チノネ・サトシ)

株式会社ANA Cargo 成田ウェハウスオペレーションセンター 貨物サービス部 運送6課 課長

1998年現ANA成田エアポートサービス(株)入社。成田空港でANA国際貨物のオペレーション業務を担当。2022年(株)ANA Cargoへ転籍。現職でANA国際貨物オペレーションにおける調整業務に従事。人工衛星プロジェクトでは、当日のオペレーション業務調整を行った。最近のマイブームは、深緑木々の中で、白球を打ち込むゴルフ。

篠塚 義広(シノヅカ・ヨシヒロ)

株式会社ANA Cargo 成田ウェアハウスオペレーションセンター 貨物サービス部 運送6課

1993年現ANA成田エアポートサービス(株)入社。2022年(株)ANA Cargoへ転籍。人工衛星プロジェクトでは、現地(オークランド)での作業調整及び貨物の確認などのアウトサイド業務を担当した。マイブームは、父親に負けない米作り。

千田 圭吾(チダ・ケイゴ)

株式会社ANA Cargo 成田ウェハウスオペレーションセンター 貨物サービス部 運送3課

2015年4月に契約社員(空港ハンドリングスタッフ)として(株)ANA Cargoに入社、2017年4月に正社員へ。成田空港でANA国際貨物のオペレーション業務(インサイド担当/ロードプランナー業務)を担当。人工衛星プロジェクトでは、当日の進捗確認、成田、オークランドとの中継役を担う。最近のマイブームは、ゴンチャの全種類制覇。次はバーガーキングにトライしたい。

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