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定温輸送技術が命をつなぐ。
医薬品輸送におけるイノベーション

Cargo+希望

定温輸送技術が命をつなぐ。
医薬品輸送におけるイノベーション


アイスバッテリーは物流の未来をつくっていく。

検体やワクチン、試験薬など、医薬品輸送には厳密な温度管理が必要とされる。輸送中に温度が少しでも基準から超えてしまうと、本来の効果が期待できない可能性があるからだ。世界中で多くの人たちが必要とするものの、輸送に際してその基準をクリアできる技術は少ない。

ANA Cargoが提供する「PRIO IB Fixed Temp.」は、ITE社が開発する革新的な保冷剤「アイスバッテリー®︎」の技術を用い、安全かつ品質を保持したままの輸送を実現している。

医薬品の温度管理、そして適切な輸送が身近になることで、私たちの暮らしにどのようなイノベーションがもたらされるのだろうか。

命を未来につなぐカギを握るのは、ひとつの"保冷剤"

インドを始めとするアジア諸国では、厳密な温度管理が必要とされる医薬品を適切な温度帯で運べないという課題がある。そして適切に運ばれたとしても、停電が多発し医薬品の保管が困難なため、必要とする人のもとに届かないのだ。

そこで「電力に頼らずに温度管理できる技術を」と生み出されたのがアイスバッテリーだ。名前こそバッテリーとついているが、その見た目はプラスチックの容器に色のついた液体が入った、大きめの保冷剤である。

簡素な見た目に反して、外気温が30℃以上であっても指定温度での安定的な保冷を可能とし、一度凍らせれば最長で120時間以上もの温度保持を可能とする優れものだ。

さらには、-20℃以下のものを保冷するために凍らせても素手で扱うことができ、くり返し使える回数はなんと約2,200回。保冷剤なので電源は要らず、ドライアイスと違い安全性が高くCO2の排出もない。アイスバッテリーは定温輸送の未来を変え、人々の思いや命を繋いでいく可能性を秘めている。

イノベーションとは、困難を未然に防ぐためのもの

ITE社代表 パンカジ・クマール・ガルグ氏

「途上国が日本と同じくらいの電力を使えるようになるには、あと100年以上かかる」と語るのは、アイスバッテリーを開発するITE社の代表、パンカジ・クマール・ガルグ氏。インドで生まれ育ったガルグ氏自身も、姉を病気で亡くしている。

「物流で定温保持をするとなれば、冷凍車や冷蔵車があります。ただ、あれらは1台で数百万から数千万と高価なものです。とてもじゃないですがワクチンの管理ができない国で導入できるようなものではない。アイスバッテリーであれば安価で使用することができ、電力も必要ありません」

優れた医薬品が開発されたとしても、必要としている人のもとに届かないと意味がない。ガルグ氏は医薬品輸送における課題解決のため、アイスバッテリーの開発を始めた。インドでは、人のためにおこなった良いことの結果は来世以降にも引き継がれていくと信じられている。カルマ(業)という仏教の基本的概念だ。

「人のために生きることこそが幸せで、私も人が困っていることに対してイノベーションを起こしたいと思い努めてきました。イノベーションというのは、高性能で画期的な、新しいものを生み出せばいいということだけではありません。苦しいことと戦ったり、何か困難なことが起きたりしたときに助けになること、その困難を未然に防ぐようなことと言えるでしょう」

ガルグ氏はこういった考えをもとに、技術者としてアイスバッテリーを開発してきた。

「物流は、血液と同じ。血液の流れが止まったら、人間は死んでしまいます。実際、東北の災害で日本は止まりかけました。物流は国にとって非常に重要なのです。アイスバッテリーはどこでも使えます。世界を変える力を持っているでしょう。私たちはそれを信じ、人の命や思いを届け、愛を繋ぐために物流の未来を作り続けます」

より高品質で導入しやすい定温輸送技術の選択肢

ANA Cargoではこれまで、定温輸送においてドライアイスコンテナ、もしくは充電式の保冷コンテナの2つを用いてきた。ANA Cargoにて定温輸送を担当する、グローバルマーケティング部 マーケティング企画課 後藤 知也は語る。

「ドライアイスコンテナは、温度が上昇し始めたらファンを回して庫内に冷気を送るという仕組みを取っているので、実は温度が多少変動しているのです。その点アイスバッテリーは、ぴたっと同じ温度をずっと安定的に保つことができます。また、充電式の保冷コンテナは一度のフライトに数十万円のレンタル料と輸送コストがかかり、それをお客様に負担していただかなくてはなりません」

医薬品輸送には厳格な温度管理が求められる。医薬品ごとに定められた範囲内の温度変動に保つことが、医薬品の輸送にとって非常に重要なことだ。温度が範囲を超えてしまい、輸送途中で価値がゼロになってしまうことも考えられる。

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事実、充電式の保冷コンテナでも厳密な温度管理は可能だ。しかし空港の中には電源設備をもたない場所もある。充電式のため、ある程度は保つことができるが、アイスバッテリーであれば12時間凍らせることで100時間温度を保つことができる。

これまでは「医薬品自体がそもそも高価なものだから、輸送コストがかかるのは仕方のないこと」と当たり前に考えられてきた。しかしながらアイスバッテリーであれば、同じような品質を保ちながらこれまでよりも安価に輸送することができる。

充電式の保冷コンテナの場合、基本的に電源に接続されて使用されるが、電源から離れて使用される場合もある。約70時間温度保持ができるとはいえ、あまりにバッテリー残量が少なくなるなど、電力を使う以上はトラブルを完全に避けることは難しい。

また、ドライアイスが危険物として取り扱われてしまう国や空港もある。そういった課題に直面したとき、アイスバッテリーという選択肢が出てくる。

「たとえば検体など、数センチ程度の貨物もあります。大きいものだとパレタイズされた試験薬など。そういった幅広いサイズにも対応できるのも、アイスバッテリーの強みです。これまでは小さなものであっても、コンテナを1台まるまる使って、何十万円も輸送コストをかけて......としてきたので、サイズや個数に合わせて、しかもこれまでよりも安価に輸送ができるのは大きな変化だと思っています。たとえばホテルによって施設やサービスが異なるように、輸送サービスも用途や選択肢が多く揃えられています。その中でお客様に最適なものを、一緒に考えられたらと思っています」

定温輸送技術は、世界の問題を解決し、未来を作る希望

近頃は15℃〜25℃の温度保持が必要な医薬品が増えているという。そういった、冷やすでも温めるでもない温度帯に保つのは、さらに難しい。しかしその温度に対応する商品も現在研究が進められているという。

「いろんな保冷剤がある中で、どれが我々の求めているものなのか。言い換えればお客様が求めているものになりますが、それに限りなく近い性能を出せるかということが重要です。実際に輸送を行うことで様々な課題が見えてくるので、そのたびに試行錯誤し、お客様がストレスを感じずにいられるよう日々改善を続けています」

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グローバルマーケティング部 マーケティング企画課 後藤 知也

世界の問題を解決し、命を救うための鍵を握る定温輸送技術は、まだまだ進化を続ける。

そして進化を遂げた技術が広まることで、ワクチンを大量に安全に運べるようになったり、医薬品自体が安価になったりする未来が訪れるかもしれない。急な災害や病気の蔓延が起きても、対応できる手段や数が増えるかもしれない。

これまで救われることのなかった命も、物流が未来へ繋いでいく。定温管理技術は、世界の未来をつくる希望なのだ。

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選ばれる航空物流になるために、運ぶことに留まらないもう一つのプラスを提供したい、そんな思いからかCARGO+は生まれました。ある時はInnovationを、またある時はTeamworkを。ただ運ぶだけでは終わらない、私たちにしか出来ない価値を届けます。